「吹奏楽部に入りたくて文教大学に進学しました」
全日本吹奏楽コンクールの常連校であり、全国大会への出場を28回も果たし、さらにその内20回は金賞受賞という偉業を成し遂げてきたのが文教大学(越谷)吹奏楽部である。冒頭は学生指揮者の菊地章太郎さんの言葉だが、中学・高校と吹奏楽部に所属した生徒にとって文教大学は、「知らない人のいない、憧れの存在」と、現在部長を務める髙橋茜莉さん、副部長の宮﨑悠夏さんも口をそろえる。
新型コロナウイルス感染症拡大による大会の中止や出場辞退を経て、3年ぶりの出場となった2022年もみごと金賞を手にした。さぞや厳しい練習を積み重ねて…と想像されるが、担当指揮者で吹奏楽を指導する佐川聖二先生の方針は少し違う。まずは奏者が音楽を楽しむこと。そして、力みのないやさしく深いサウンドを観客に伝わるように演奏すること。これを大切なこととしており、菊地さんは「音楽に対する考え方が変わった」と言う。
大会後、髙橋さんは観客のひとりに声をかけられた。「とてもよかった、楽しかったと言っていただき、金賞をとったこと以上にうれしかったです」。客席に自分たちの目指す音楽が届いたという手応えを感じた。
吹奏楽部には、D活動と呼ばれる活動がある。例えば小学校での演奏会、動物園でのライブなど、世代を超えたさまざまな人に生の音楽を聴いてもらう取り組みだ。リーダーとしてD活動に関わってきた宮﨑さんは「会場とのやりとり、打ち合わせ、選曲など、運営のすべてを学生主体で行うことに最初は驚きましたが、人として学ぶことが多かった」と話す。また練習日は1週間に4日あるが、それ以外にカレー大会やレクリエーション活動など、音楽以外の活動が多いことも文教大学(越谷)吹奏楽部の特徴だ。
決してコンクール中心のバンドではなく、人として必要なことを学び、部員同士のコミュニケーションを高め、豊かなハーモニーを追究し、音楽を楽しむことに注力する。「コンクールはその結果が出ているにすぎません」と、菊地さんは語る。
今年のコンクールは、1940年に作曲されたイベールの『祝典序曲』を選んだ。これまでの選曲とは異なる、古典音楽に挑戦する。「まわりの音によく耳を傾け、調和のとれた美しいハーモニーを客席に届けたい」と力強く語る髙橋さん、宮﨑さん。一音一音を大切に客席に届く豊かな音を紡いでいく。