あやなりBP

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2023年7月掲載
渡部 道子 さん

渡部 道子 さん

(文教大学女子短期大学部/1982年卒業)

日々の思いを素直な言葉でうたう五行歌

 カルチャーセンターで五行歌の講師を務めて26年目となる、渡部さん。五行歌とは、現在「五行歌の会」を主宰している草壁焔太氏によって考案された詩歌で、五行に分けて書く以外に大きな制約がないことが特徴だ。季語を入れる必要はなく、字数も音数も自由。その時の思いを五行でどう表現するかで個性が表れる。
 渡部さんが五行歌に出会ったのは、自身の子どもが3歳くらいのときのこと。子どもとの、大変だけれど、ハッと成長を感じさせる出来事などを、いつもの話し言葉で五行で書き記すことは、日記をつけるよりも簡単で楽しかった。

園バスから降りるなり
にゅっと
片足突き出して
「くつした
はいてきたよ」

 この歌は、いつも泥んこの裸足のまま運動靴をはいていた息子さんが、初めて靴下をはいて送迎バスから降りてきたときの光景を詠んだもの。「子どもの成長が感じられて、思わず息子をギュッと抱きしめたことを思い出します。周りの人からも『とても良くわかる』と共感してもらえた作品です。思ったそのままを“言葉”に乗せてうたう五行歌。だからでしょうか、“キレイ”とか“悲しい”とか、その時々の思いが素直に表現されて、無理がないように思います」

よみうりカルチャー八王子にて

文教時代に培った、学び続ける気持ち

 短大では英語英文科に在籍。司書の資格を取る勉強もしていたため、高校生のとき以上に勉強していたと言う渡部さん。そこへさらに「哲学研究の同好サークルを作るから、入りませんか?」とのお誘いが入った。ただでさえ忙しくしているのに、哲学の門まで叩けないとも思ったが、悩み多き青春時代。「ものごとに対してちゃんと向き合って考えるきっかけになればいいな」と参加することに。そのとき以来、哲学を教えている村野宣男先生とは、今も年賀状や季節の挨拶などを交わす関係が続いている。「カントなどの勉強は難しくてちっとも頭に入らなかったけれど、先生の『とことん悩めばいい』という言葉や、とても研究熱心な姿勢に感銘を受けたことは、今も私の物事の処し方に影響を与えています。こうしたことも含めて、とても良い学校に入ったと思っています」
 村野先生から、教室の作品集について温かな感想をもらったことも心の支えになっていると言う。講師になって四半世紀、辞めたいと思うことも何度かあったけれど、それを乗り越えて続けることができたのは、先生の言葉と、自分に就いて学んでくれた生徒がいたから。「歌を通して多くの人と出会えたし、逆に生徒さんから教わることもたくさんありました」。学び続けること。それが短大を通じて得た教えであり、今の渡部さんをつくっている。

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    • 渡部 道子 さん
    • わたべ みちこ
    • カルチャーセンター講師
      文教大学女子短期大学部1982年卒業
  • 渡部 道子 さん