あやなりBP

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東京あだちキャンパス特集 特別対談

2020年7月掲載

お話頂いたのは・・・

  • 近藤研至
    近藤 研至 こんどう けんじ
    文教大学学長
  • 近藤 やよい
    近藤 やよい こんどう やよい
    足立区長

地域に開かれた大学づくりが、まちを変え、人を変える

地域に開かれたキャンパスとして建設が進む「東京あだちキャンパス」。 キャンパスの開設にあたり、大学としてどんな形で地域づくり、まちづくりに貢献していけるでしょうか。 その期待と抱負について、足立区長・近藤やよい氏と意見を交換しました。(2020年6月取材)

大学によってまちに化学変化が起きる

学長

今日はお忙しいところお時間をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

区長

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

学長

いよいよ来年4月、本学の国際学部と経営学部が湘南キャンパスから「東京あだちキャンパス」へ移転します。キャンパスが新設されるのは足立区花畑地区。これまでに足立区内に開設している大学はすべて千住地区にあり、花畑というエリアでどんな大学づくりを行えるのか、ある意味新しい挑戦なのかなと思っています。

区長

花畑地区は足立区の北側に位置するエリアです。農村地帯から発展して今では住宅地が広がり、あだちキャンパスの隣には、UR都市機構の「花畑団地」が並んでいます。そこに大学が来るということですから、大学進出を機に花畑がどんな風に変わっていくのか想像すると、胸躍るような気分です。足立区には現在5つの大学がありまして、学長がおっしゃる通り千住地区に集中しています。大学に馴染みのなかった地域の方たちに、大学を中心にまちがどう変わっていくのか、実感していただけると思います。

学長

近隣住民の方を対象としたキャンパス建設説明会で、多くの方たちから賛同の拍手をいただいたと報告を受けました。新しい施設ができる時には、たいてい反対運動が起きたりということがあるわけですが、花畑の地域の方たちには快く受け入れていただき本当にうれしい限りです。

区長

千住地区は昨今、「住んでみたいまち」として人気が出てきているのですが、その人気のもとをたどっていくと大学開学にたどりつきます。私たちは大学によって、まちに化学変化が起きることを経験していますので、花畑で千住とは異なる、どんな化学変化が起きてくるのか楽しみにしています。と同時に、ただ眺めているだけではなく、大学との連携でこれまで培ってきたノウハウを生かして、新たな連携の芽というものを一緒に育てていきたいと思っています。

学長

文教大学から文教地区を作る。洒落ではありませんが、北のエリアが足立区の文教地区として生まれ変わるよう、本学としても力を発揮していく所存です。

大学の持つ宝を地域に還元する

区長

足立区が乗り越えなくてはならない課題の一つに、「子どもの学力」があります。それをどうするのか考えていった時に、大学生が周囲にいるのが当たり前の環境、目の前に大学があってその側を通って小学校や中学校に通う環境というのは、子どもたちの育ちに大きな影響をもたらすと思うのです。「将来何になりたいの?」と聞かれて具体的な夢を語れたり、進学して大学で何を学ぶのか目標を明確にできたりするためには、夢や目標を喚起する環境が目の前にあることが重要だと考えます。足立区が大学の誘致にこだわってきたのは、そこにも大きな理由があるんですね。

学長

今回は区長のご要望もあって、敷地を塀で囲まないオープンなキャンパスを設計しました。物理的にはもちろん、感覚的にも地域に「開いている」ということはとても大事だと思っています。子どもたちの目に学生たちの学ぶ姿が触れる場であったり、地域の方たちが憩える場であったり。そして場の共有だけでなく、大学は発信・共有できる情報をたくさん持っています。教育、文化、情報セキュリティ、貧困対応、高齢化社会、多文化共生など、すべて本学の学術領域で担っているものです。そうした本学の持っている能力は、足立区が抱えている問題、未来へ向けた取り組みに応えられる部分があるはずと自負しています。

区長

ありがとうございます、大変頼もしく感じております。これまで各大学とも1年に1回、私と学長とで学長会議を開き意見交換を行ってきました。そうしたケースは珍しいと聞いておりますが、トップ同士が話をして問題解決、あるいは新しい取り組みを始めるという形での連携が必要だと感じています。言ってみれば、大学は可能性を持った宝の山。大学と区がコミュニケーションをとり、それを地域の方たちに還元していく責任があると、今日のお話をうかがって改めて実感しました。

住んでいることに誇りを持てるまち

学長

日本経済新聞が行った企業の人事担当を対象とした調査で、「採用を増やしたい大学」という項目で本学が2位に選ばれたんです。すごいでしょう?(笑)質の高い教員を育ててきた実績には自信がありますが、採用を増やしたい大学として評価されるとは驚きでした。

区長

まさに「育ての、文教。」の面目躍如ですね。

学長

「自分たちが行ってきた教育は間違っていなかった」と教員たちも大変喜んでおりますし、学生たちにとっても自信になっているようです。「育てる」とは、カリキュラムを準備して発信するだけでは、まったく何も変わらないんですよね。どうやったら育ちに貢献できるか。話し合いながら進めていくことが本当の「育ち」に関わることだと最近つくづく感じています。ですから開かれたキャンパスができたらすべてよし、ではなくて、これからどうするかが大事だと思っています。

区長

10年、20年経って、来ていただいてよかったと地域の方たちが言ってくださることが大切ですね。

学長

はい。10年、20年かけて足立区での文教大学の歴史が作られていく。歴史とは一歩一歩、一つひとつの交わりの中から生まれてくるものですから、積極的に足立区の育ちに関わらせていただきますよ。

区長

花畑の方たちも自分たちが大学のために何ができるのか、考えてくださっています。自分たちの大学だという気持ちを、非常に強く持っていらっしゃるのですよ。花畑は歴史をたどっていきますと、江戸時代千住地区に次いでたくさんの寺子屋や家塾が開業された地域です。特に算学(日本の算数)を教えるところが多かったという特徴がありまして、もともと「学ぶ」ことに前向きな土地柄だったということが言えると思います。

学長

そうでしたか。大学とは、ある意味縁のある土地なのですね。

区長

そうした歴史、地域の方たちの思いを汲み取って、何か形にして差し上げたい。自分のまちを変えたいという地域の方たちの気持ちを引き出して一つの形にしていくことは、学長がおっしゃる「育ち」や「育て」につながるのではないかと思うのです。

学長

本学の越谷キャンパスは50年の歴史があるのですが、今回のコロナウイルス感染症の発生で地域の方たちが生活に必要な物を集めて「ひとり暮らしで辛い思いをしている学生はいないか」と声をかけてくださったんですよ。

区長

あらっ、うれしいことですね!

学長

地域の方たちも学生を、大学を、一緒に育てているという意識を持ってくださっている。足立区でもそうした関係性を紡いでいければいいですね。

区長

はい。大学ができることで、まちが変わる。自分たちもその変化を担ってきた、自分たちも協力して変えてきたのだという自負心が、まちに対する誇りにもつながっていきます。住んでいるまちに誇りを持てる。このことがもっとも大切なことなのかもしれません。

学長

地域に溶け込んだキャンパスの姿を早く見たいですね。今日はありがとうございました。

区長

ありがとうございました。

  • 氏名
    • profile
    • 近藤 研二
    • 文教大学学長。岐阜県多治見市出身。文教大学教育学部卒業。上越教育大学大学院、筑波大学大学院を経て平成4年より文教大学着任。平成29年に学長就任。
    • profile
    • 近藤 やよい
    • 足立区長。東京都足立区出身。警視庁警察官、青山学院大学大学院経済学博士前期課程修了、税理士、都議会議員を経て平成19年に足立区長に就任
  • 氏名