あやなりBP

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2025年7月掲載

【特集】全国の校友に会いに行く in 栃木

日本各地にいる卒業生を訪ね、地域に根ざした暮らしぶりを聞きながら、地元のいいところ、おいしいものを紹介してもらう新企画です。第一弾は栃木県。校友のおすすめを巡って、栃木を旅してみてはいかがですか?

池上 峻 さん

池上 峻 さん

(文教大学人間科学部人間学科/2004年卒業)

こころみ学園の園生たちと
ブドウの世話をして、ワインを造る

 ココ・ファーム・ワイナリーは東武伊勢崎線足利市駅から車で20分ほどのところにある1980年創業のワインの醸造場である。敷地内には知的障害者の方たちが暮らす障害者支援施設「こころみ学園」の施設があり、こころみ学園の園生たちがワイン造りの担い手だ。取材に伺ったのは5月。小高い山の南西側斜面に広がるブドウ畑は、芽吹いた葉がどんどん伸びていく季節である。緑のブドウ棚の中には、梢から伸びてくる余分な葉を取り除く「芽かき」の作業をしている園生たちの姿があった。
 ここに訪れた人は、まずはブドウ畑の急な斜面に驚くことだろう。平均斜度38度。下から見上げるとほぼ垂直に見えるこの斜面が、ブドウ栽培に欠かせない日当たりと水はけの良さをもたらしてくれる。「スキーのジャンプ台が36度ですから」と笑うのは、代表である池上峻さん。こころみ学園の園生たちと山の斜面を開墾することから始め、ブドウを栽培し、ワイン造りを手掛けるようになった創始者・川田昇の孫にあたり、大学卒業とともにこころみ学園の職員となった。その後、会社法人のココ・ファーム・ワイナリーに移り、現在は代表を務めている。「継ぐつもりはなかった」そうであるが、履歴書一枚で進んでいく就職活動に違和感を感じ、祖父が築いたこの場所へ帰って来た。こころみ学園の園生たちと暮らし、ブドウの世話をし、ワインを造る。そんな生活が始まった。
 「ここが実家だったのかと思うくらい、こころみ学園での生活は居心地のよいものでした。園生たちは一緒に仕事をする仲間であり、寝食を共にする家族であり、自分もその中の一人であると感じられることが、本当にうれしかったんです。最近は歳をとって畑に出られない園生も出てきました。こころみ学園あってのワイナリー事業ですので、園生たちが高齢になってもできる仕事を何か考えなければと思っているところです」

人も、ものも、無駄なものはない
すべてのものを生かす

 中学校教諭であった祖父の川田氏が、教室の隅で小さくなっていた知的障害のある子どもたちを外に連れ出し、山の開墾を始めたのは1958年。学校や家庭、社会から見放されていた彼らが、働くことで役割を見つけ、認められ、自分自身も生きる喜びを感じることができる。そんな仕組みづくりの結果としてあるのが、現在のココ・ファーム・ワイナリーである。
 「ブドウ畑では、もともとは食用のブドウを栽培していました。ところが高度経済成長期の頃から、不揃いであったり、見た目が良くなかったりするブドウは売れなくなってしまった。おいしいのに行先のないブドウを生かすにはどうすればよいか、その先にあったのがワイン造りだったんです。園生たちが誇りに思える仕事をつくり出そうという祖父の思いは、最終的にはワイン造りという形になったわけです」
不揃いなブドウを生かしてワイン造りが始まったように、すべてのものを生かすことが、ワイナリーの運営に通底している考え方だと池上さんは言う。例えばこころみ学園では、原木しいたけの栽培も行っているが、売り物にならないが旨味たっぷりの小粒のしいたけを使って商品化したフリーズドライのスープは、池上さんイチオシの逸品だ。人も、ものも、無駄にしない、無駄なものはない。生かすことを考えるのが、ココ・ファーム・ワイナリーの在り方である。
 毎年11月にブドウ畑で行う収穫祭には、大学時代の友人がボランティアで毎年参加してくれている。仲の良いクラスで、10人ほどのグループは今もつながっている頼りになる仲間だ。仲間の面々はさまざまな分野で活躍しており、学園や仕事のことを相談することもある「精神的な支えになっている」友人たちだ。またそばに寄り添う妻は、4年間いつも一緒に行動していたグループの中の一人である。
 「妻は向学心がありましたが、自分は遊び歩いていましたね。でもゼミの角田巌先生の授業は、今でもよく思い出します。“遊び”の大切さを文化的、精神的側面から教えてくださり、それが仕事をする上で役立っています。よく授業が終わると飲みに連れて行っていただきました。少し前のBUNKYO校友フェスタで再会し、うちのワインを飲んでくださってうれしかったです」

文教と私

たまたま知り合った人が文教大学出身ということがよくあり、文教というつながりがあって、助けられていると感じることが多いです。自分もそのつながりの中の一員として、恥ずかしくない生き方をしていきたいと思っています。

ココ・ファーム・ワイナリーを紹介します


  • 花瀬橋と毛長公園
    ブドウ畑を見渡すカフェのテラス席
  • 花瀬橋と毛長公園

ブドウ畑に面したカフェ併設のショップも

 ワイナリーの敷地内にはブドウ畑に面したショップがあり、自家製のワインが購入できるほか、こころみ学園で作っている原木栽培しいたけ、ワインの関連グッズなども販売。併設のカフェでは、ブドウ畑を眺めながらワインや軽食、昼食を楽しむことできるほか、ワインのテイスティングやワイナリー見学も楽しめます。

  • オーク樽に詰められたワインが眠る天然の貯蔵庫は、ブドウ畑の反対側の山の岩盤をくり抜いて作った。30度を超す夏の猛暑日でもワインの保存に適した12〜15度を保つ。ワイナリー見学では貯蔵庫へも案内してくれる
    オーク樽に詰められたワインが眠る天然の貯蔵庫は、ブドウ畑の反対側の山の岩盤をくり抜いて作った。30度を超す夏の猛暑日でもワインの保存に適した12〜15度を保つ。ワイナリー見学では貯蔵庫へも案内してくれる
  • ショップには、自家製ワインやおつまみが並ぶ
    ショップには、自家製ワインやおつまみが並ぶ
  • スパークリング・白・ロゼ・赤・デザートワインなど種類が豊富
    スパークリング・白・ロゼ・赤・デザートワインなど種類が豊富
  • 毎年11月にワインのイベント収穫祭を開催している
    毎年11月にワインのイベント収穫祭を開催している

ココ・ファーム・ワイナリー

  • ココ・ファーム・ワイナリー
  • (所)栃木県足利市田島町611
    (電)0284-42-1194
    (営)ショップ10:00~18:00、
       カフェ11:00〜16:00(土日祝日〜17:00)
    (休)基本無休(詳しくはHPをご覧ください)