あやなりBP

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2023年11月掲載
国際学部 清水麻帆ゼミ「製造業班」

国際学部 清水麻帆ゼミ「製造業班」

(文教大学国際学部)

足立区をイメージしたクラフトビールをつくる!

 「文化と地域創生」をテーマに活動している清水麻帆ゼミ。観光資源の開発や地域活性化を目指して、2022年春から足立区・北千住にあるクラフトビール製造所の「さかづきBrewing」と協働して「足立区をイメージしたクラフトビール」の製造に取り組んでいる。これに挑んだのは、当時3年生だった5名の学生。実際にビールを醸造するのは「さかづきBrewing」だが、新商品の味の方向性を決める商品企画を担当した。
 このビールは「足立区に来なければ飲むことができない」、「地域の人たちが誇れるビール」にすることを目指して始動。まずは自分たちが足立区を知らなければ、足立区をイメージしたビールをつくることはできないと情報収集に勤しんだ。実際に北千住を中心に足立区内の各所に足を運び、図書館等で区の歴史や文化が書かれた本にあたったり、足立区を紹介するガイドブックに目を通したり、『さかづきBrewing』では客層をつぶさに観察したりした。
 その中でも多くの時間を割いたのがアンケート調査だ。学内だけでなく、イベントなどを利用して、学外の人からも、足立区をどんなところだと思うかアンケートを集めた。
 しかし自由記述で書いてもらったアンケートの答えはてんでばらばら。イメージをつかむことができない。「それなら自分たちの思う足立区のイメージでいいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、入学時はコロナ禍。1、2年次はほぼ登校できず、しかも全員足立区外の出身。まったく足立区のことがわからない。かなり残り時間が限られてきていたが、今年1月に2回目のアンケート調査の実施に踏み切った。
 「前回の反省を踏まえ、2回目は足立区のプラスの面だけを聞くアンケートに修正しました。ただアンケートを集めるだけではダメ。どんな回答を集めたいかによって、アンケートの設問を変える必要があることを学びました」(若山さん)

当初予定の1種類から2種類のビール製造へ

 短期間だったが300件のアンケートを収集し、そこから足立区の特徴を抽出していった。そこで目をつけたのが、古い建物にリノベーションを施すなどして、昔ながらの雰囲気を大切にした家屋が多くあること。タイムスリップしたかのような昭和の古い街並みが残る場所があること。
 そしてさらにもう一つ、「足立区に住んでいる人とそうでない人という切り口でアンケートを見比べたところ、在住者にとっては『銭湯が多いこと』が良いイメージにつながっていることがわかりました。でも住んでいないと銭湯が多いことにあまり気づかない。そこで『この差を埋めていきたい!』と、みんなの意見がまとまりました」(吉野さん)
 「さかづきBrewing」の金山尚子さんとの打ち合わせで、「昭和レトロ」と「銭湯」をイメージした2つのビールを提案。当初は1種類の味の開発の予定だったが、金山さんも面白いと太鼓判を押し、2種類のビールづくりをすることに決定した。
 「『昭和レトロ』は、現存する日本で最も長い歴史を持つサッポロラガービールのように、苦味を前面に押し出す味に。年配の人が昔の味を思い出して話がはずむようなビールにしようということになりました。『銭湯』のイメージは、やはりお風呂場に描かれた富士山です。山裾をイメージした青いビールをつくり、その上にのる泡で山頂の雪を表現。味も銭湯上がりに合うような、爽やかでさっぱりとした味でと考えました」(諸川さん)

壁に突き当たるも妥協せず味にこだわる

 ところが、ここで再び立ち止まらざるを得なくなる。金山さんから「青色のビールをつくることはできるけれど、その場合、スッキリ、爽やかな味にはなかなかならない」という話があがったからだ。「青色ビール」という写真映えの良さだけで注目を集めることはできるかもしれない。けれど、それが目指す「地域の人が誇りを持てるビール」になるのか。答えはやはり「No」だ。金山さんからは「赤富士では?」と次案をもらったが、味の印象があまくなるということで、「銭湯のビール」に求めている爽やかでさっぱりとした味にはならない。そこで全員でさらなる別の味のイメージを考え出すことにした。
 「銭湯と、足立区のイメージとして強い『和の要素』を掛け合わせて、再考を重ねました。すると足立区の銭湯の多くでユズや柑橘類を使った『季節湯』というものを行っていることがわかりました。そこで、銭湯などで多く用いられる檜をイメージした香りの、ユズ味のビールはどうだろうと考えました」(柏葉さん)
 これを金山さんも快諾。現在、醸造が進められている。この2種類のビールは、11月25日に開催される「BUNKYO校友フェスタ2023」で初お目見えし、販売が決定している。学生たちの仕事は終了したのかと思いきや、今は販売に向けて、広報活動へと頭を切り替えている。多くの人に存在を知ってもらい、手を伸ばしてもらえるよう、SNSをはじめとするさまざまな手段を使って宣伝をするつもりだ。
 「大学で初めてできた仲間と、初めて一から関わったものづくり。これは私の青春でした!」(赤羽さん)
 とまどいも失敗も、情熱も愛情も、彼女らの青春を注いでつくられたクラフトビール。果たして今後どのように成長していくのか、楽しみでならない。

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    • 国際学部 清水麻帆ゼミ「製造業班」
    • 取材にご協力いただいた清水麻帆ゼミ「製造業班」メンバー(左から順に記載)
      国際学部国際理解学科 4年 赤羽 由衣(あかはね ゆい)さん 
      国際学部国際観光学科 4年 若山 奈菜(わかやま なな)さん 
      国際学部国際観光学科 4年 吉野 成美(よしの なるみ)さん 
      国際学部国際観光学科 4年 柏葉 瑠奈(かしわば るな)さん 
      国際学部国際観光学科 4年 諸川 みさき(もろかわ みさき)さん 

      写真撮影場所:文教大学 東京あだちキャンパス
  • 国際学部 清水麻帆ゼミ「製造業班」