
堀川佑果さんがご主人と営むイタリアンレストラン「 Italian M'sバル」(以下、「M'sバル」)は、文教大学付属中学校・高等学校、最寄り駅の荏原町にある。堀川さんは小学校から高校まで文教大学の付属校に通った生粋の文教っ子。「友達と楽しく過ごしたことが一番の思い出です。放課後はいつも、このあたりをウロチョロしていました」。だから今も、行動範囲は当時と変わっていないと笑う。
とはいえ、この場所に店を構えることになったのは、まったくの偶然だった。
「あちこちの物件を探していたのですが、たまたま条件に合ったのがここでした。同じ商店街には親しくしていた後輩のお店もあって、文教に呼ばれたのかなと思います」
小学校からの親友をはじめ同級生、文教大学付属中学校・高等学校の教職員が店を訪れてくれることもある。文教でつながった人との縁は、堀川さんの宝だ。
M'sバルがオープンしたのは、2017年7月。お子さんはまだ幼稚園に入ったばかりだった。
「子どもを幼稚園に送った後に店へ出て、ランチが終わると自宅に戻り、子どものお迎えや家事をして、子どもを連れてまた店に戻って夜遅くまで働くという毎日でした」
おっとりとした口調からは、その大変さはあまり想像できないが、それも堀川さんの人柄のなせるわざなのだろう。
「下町のカジュアルイタリアン」を標ぼうするM'sバル。おすすめは?と伺うと、「全部です」という答えが返ってきた。ご主人が腕を振るう自慢の肉料理はローストや煮込み、魚料理はアクアパッツアにカルパッチョ、バラエティーに富んだパスタ……と、選択に迷うほど。ワインはイタリア産樽生というこだわりようだ。
ホールを担当する堀川さんは飲食店での勤務経験が豊富で、プロ意識も高い。「なじみのお客さまの誕生日や記念日、お子さまの名前などはメモして、頭に入れるようにしています」。店内カウンター上部に掲げられているチョークアートは、創作和食レストランに勤務していたときに身につけたという力作だ。
そんなM'sバルを愛してくださる地元の常連客に支えられて、コロナ禍も乗り越えた。一方で思わぬ試練も立ちはだかった。堀川さんに病気が見つかり手術を受け、療養生活を送ることになったのだ。2021年1月、何度目かの緊急事態宣言中だった。
「まるで神様が休みなさいと言っているようなタイミングでした」
半年の療養後、仕事に復帰。再び店と自宅を行き来する忙しい毎日を送っている。ご主人も、「妻がいないと店は成り立ちません」とたたえる。「今年は、お客さまと少しゆっくり会話したいですね」と目標を語る堀川さん。ご主人と二人三脚。今日も笑顔でお客さまを迎えている。