2023年開催の「第25回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」の コンチェルト部門/小学生の部で、全国大会・アジア大会ともに金賞、ソロ部門で全国大会金賞、アジア大会奨励賞に輝いた舘陽音子さん。アジア大会でポーランドエヴォリューション弦楽四重奏団と共演した際に多彩な響きに感動し「ピアニストになりたい、オーケストラともっと共演したい」と夢を固めた陽音子さんがピアノを始めたのは3歳から。高校の音楽教師である母親に導かれ、母親が子どもの頃から使っていたピアノの前に座るようになった。5歳からは専門の教室に通いコンクールに出場、現在はプロのピアニストを輩出する教室で切磋琢磨する日々を送っている。
練習は毎日最低2時間行う。ピアノ演奏には技術が必要だが、その基本は「よく指が動くこと」にあると言う。
「リズム練習というのですが、練習用の教本を使ってとにかく指を動かし、指を鍛えることが技術の向上には欠かせません」
スポーツ競技の筋肉トレーニングのようなことだろうか。毎日の練習の半分はリズム練習だと話してくれた。陽音子さんはこうした練習方法を先生のアドバイスなどをもとに自分で考え、自主的に行っている。練習中のピアノの音を録音して聞くようになったのも、「自分の音をよく聞きなさい」と先生から言われたことがきっかけだ。
「初めて自分の音を聴いた時、『わーきたない』」と思いました。」それでも練習がとっても好きだと言い切る陽音子さんは、練習に没頭し、自分の音を聴き続けた。
「音が聴けるようになると、どんな音を出したいのか、それにはどうしたらよいのか。やり方を覚えていき、上達を感じられるようになりました」
コンクールは「完璧に演奏できるようにして出場する」と陽音子さんは言い切る。
不安なところ、指が動かないところ、弾けないところは「モグラたたきのように」つぶしていく。当日、本番を待つ間は、指がよく動くように手袋をして指を温め、ただ曲のことだけを考えて無心になる。緊張はしない。椅子に座ると必ずピアノにご挨拶をする。どんな音を出してくれるピアノなんだろう、わくわくしながら大きく息を吸い、指を鍵盤に置く。この状態に自分を持っていくために、完璧を目指す日々の練習があるのだ。
4年生になり、大人っぽい音を目指して練習するようになった。YouTubeなどを参考にして大人の弾き方を考え、「コンクールの時は、自分は大人」だと思って弾くようにしている。
数々のコンクールに出場し成績を残している陽音子さんだが、日本における世界でも最大規模のピアノコンクール、ピティナ・ピアノコンペティションの全国大会では入選はしているが、まだ賞を取ったことがない。もちろん今年も挑戦する。年々求められるレベルも高くなるので「だからやりがいがある」と目を輝かす。いつか大好きなピアニストの角野隼斗さんみたいにピティナ特級でグランプリを取りたい。そしてその先の目標はプロのピアニストだ。「ピアノでお話の世界に連れて行けるような演奏ができるような、キラキラした透明感のあるガラスのような音を出せるピアニストになりたい」。実現に向かって、一つひとつやるべきことを重ねていく。
ショパン国際ピアノコンクールin ASIA
コンチェルト部門 全国大会・アジア大会 金賞
ソロ部門 全国大会 金賞、アジア大会 奨励賞