
取材場所に現れた杉田知佳子さんは、自ら刺繍したという着物姿だった。茶道の先生である杉田さんは、文教大学付属中学校・高等学校茶道部の指導もしており、その縁で三蓉会会長にと白羽の矢が立った。名誉会長の菅沼すみ子さんは、40年以上母校で国語の教員、教頭を務めた。杉田さんの高校時代の恩師でもある。「杉田さんは活発で、茶道のイメージはなかったですね」と笑う。杉田さんは「会長になったときは菅沼先生が教員として在籍していらっしゃって、何でも相談できて心強かったです。菅沼先生はじめ役員の皆さんの支えがあってここまで来れました」と感謝する。二人は師弟であると同時に、三蓉会の運営においては息の合った同志だ。約2万2千人の三蓉会会員の親睦を深め、母校に貢献することを目的に、年1回の総会と隔年の同窓会を開催し、会報も発行。白蓉祭ではお休み処を設け、会員が旧交を温める場を提供している。
「総会で予算や決算、事業計画などの承認をいただいたら、会報で報告。そこで同窓会について告知し、同窓会を開催する……と一連の業務に追われますが、会報を待っていたかのように、同窓会への参加申し込みがあったり、同窓会で皆さんが楽しんでくださっている姿を見たりすると、がんばったかいがあったと思います」(杉田さん)
会員への情報伝達手段は会報のみ。諸経費も値上がりするなか、いかに読んでもらうか、今の形でよいのか、腐心しているという。そこには三蓉会や母校への強い思いがある。
「教員だった私にとって母校は常に身近にありましたが、多くの会員は卒業して初めて学園生活を懐かしく思い出すようになります。三蓉会はそんな思いをつなぐ場でありたいと思っています」(菅沼さん)
菅沼さんは、幼稚園から高校まで生粋の文教人だ。「中学までは楽しいことばかりの学園生活でしたが、高校になるとしつけの厳しさに息苦しさを覚えたこともあります」と明かす。中でも礼法の授業はその筆頭だった。礼法室でお辞儀や起居動作、ふすまの開け閉め、畳の歩き方などの練習を重ねた。いざ実践しようとすると、足がしびれて立てなくなった人達も数えきれない。
「先生は『卒業したら皆、礼法の授業があってよかったと言います』とおっしゃっていました。そのときは半信半疑でしたが、後に社会に出て、納得しました」
大きくうなずく杉田さんだが、その厳しさが杉田さんを茶道に導いたのだと言う。「それほど厳格な学校の中でお菓子が食べられて、お菓子を調達するのに外にも出られるというのが魅力で、茶道部に入りました。礼法も茶道部なら『優』をつけてもらえたんです」。いわば不純な動機で始めた茶道が、文教との縁を今日までつないでくれたのだから、人生はわからない。そして、おもしろい。
誰もがそんな“文教物語”を持っている。二人は、「同級生や先生方を懐かしく思ったら、ぜひ三蓉会に連絡してください」と口を揃える。10月17日の創立記念日には、同窓会がコロナ禍以降5年ぶりにディズニーアンバサダーホテルで開催される。ぜひ会報で確認を!