
「焦らなくていい。じっくりと深く考え、“真の学力”を身につけてほしいと思っています」
穏やかな笑顔でそう語るのは、2024年、文教大学付属高等学校教頭に就任された五十嵐彰先生。文教大学教育学部卒業後、教育専攻科、上越教育大学大学院を経て、国語教師として付属中学校・高等学校の教壇に立ち続けてきた。
「私が大切だと考えているのは、1週間でテストの点数を5点、10点上げるような小手先のテクニックよりも、より深く物事を理解する力。年単位でゆっくりと、確実に力をつける教育に重きを置いています」
自分で考えて行動し、その判断の責任も自分でもつ。もちろん進路に関する情報やアドバイスは惜しみなく与えるが、「最後に決めるのは自分」。いつも生徒にそう伝えているのは、自分が納得できる人生を選択してほしいと願っているからだ。
22年連続、クラス担任としても駆け抜けてきた。ずっと大切にしているのは、生徒の話をよく聞くこと。一人ひとりが何を感じて、どう考えているのか。無理強いすることなく、穏やかに耳を傾けることで、さまざまな話を引き出すことができる。
とくに一貫して生徒に伝えてきたテーマは、「愛を与えられる人間になってほしい」ということ。進路に、人生に迷いを感じ、揺れ動くことの多い年頃。建学の精神である「人間愛」という言葉に対して、気恥ずかしさを感じる生徒もいるが、他者を思いやる優しさは1人から2人、3人……と、自然に集まり、増えていくものだと生徒には話す。
最後のクラス担任として送り出した生徒が、高校生活を振り返って書いた作文に印象的な一文があった。「周りに優しくしていたら、優しい子と友達になれる。自分が優しい気持ちを持つと、優しい人たちが周囲に集まってくるのだと思いました」。
本当に伝えたいことが、しっかりと伝わっていた。最後にその言葉を作文に残してくれたことが、心からうれしかったと振り返る。
文教大学在学中は、軽音楽部に所属。結成したバンドではエレキギターとボーカルを担当し、機材の設置なども行っていた。2009年からはダンス部の顧問になり、学生時代の経験から音楽や映像の編集といった“裏方”として、生徒たちの活動を支援。2025年にはついに高校ダンス部が、全国大会に初出場を成し遂げた。
「目標もすべて生徒たちが話し合って決めて挑んだことです。私はもちろん踊れませんから(笑)、一ファンとして、ステージ上の素晴らしいダンスに感動しました。部員たちには、ぜひこの経験を誇りに思ってほしいと伝えました」
自分で決めた道を、とことん進む。そうした自立の精神も、文教魂のひとつといえる。