
1953年創立の立正学園女子短期大学から始まった文教大学女子短期大学部は、58年の歴史の中で約3万人の卒業生を社会に送り出した。女子に幅広い教養と職業のための専門的な知識を教授することを目的として、家政科の1学科から歩みを始め、やがて5学科を擁する教育機関として発展。その間には校舎が東京・旗の台から神奈川・茅ヶ崎へ移転した。
短大閉学時、健康栄養学科の学部長だった齋藤貴美子先生は、ご自身も立正学園女子短期大学の卒業生であり、その歴史と文教学園の発展を見守ってきた一人である。約7,000名の学生を授業担当者として教え、退職後も同窓会「芙蓉会」の活動を通して卒業生たちと関わってきた。
閉学して15年が経つが、最近は卒業生から「孫が学部を受験する」「〇〇学部へ入学した」といった報告をうれしく聞き、短大はなくなっても、短大のつながりは脈々と生きていると感じる。
記念誌『文教大学女子短期大学部の歩み』は、齋藤先生の発案で刊行された短大の歴史を記録した一冊だ。先生がほぼ一人で編集作業を行い、約1年をかけて編纂した。湘南キャンパスから旗の台キャンパスへ日参し、資料室のダンボールの山から役立つ資料を探し出し、また関係者に聞き取りを行い文章にまとめていった。
「大変な作業でしたが短大の発展のために当時の教員、職員がどれだけの熱意を持って努力されてきたか。その思いと行動の証、短大が果たした役割を風化させたくなかった。そして記録として残しておかなければ、短大の存在を忘れられてしまうという危機感もありました」
巻末のあとがきには、「この冊子が文教大学のさらなる発展に役立つように」と結ばれている。
医師の家庭で育った齋藤先生が短大の家政科に進んだのは、栄養士の資格を取り、「食」という視点から医療の現場で役に立ちたいという思いからだった。将来は医療機関で栄養士として働き、家庭を持ったら家族のために栄養士の資格を生かそうと思っていた。ところが運命とは不思議である。
「学校から研究室の助手にならないかと誘われたのです。少しですが手当も出ましたし、勉強を続けることもできたので、お話をお受けしました。学校に残って学び、学生たちと関わる中で、努力が自分の中だけで終わらず別の形で実り、そして学生たちと共に成長していくことのできる教育というものに魅力を感じ、教員を続けていくことができました」
そして人を育てることは、社会貢献につながる素晴らしい仕事であることにも気づく。考えてもいなかった道であったが、結局50年近くを文教学園で過ごし「学生たちから知恵と力をもらって、感謝しかない」と笑う。