あやなりBP

あやなりBP
2026年8月掲載
大久保 智睦 先生

大久保 智睦 先生

(文教大学教育学部教授 学校教育課程 美術専修在籍/2013年〜)

学園創立99周年。「白寿祝い」の心を込めて描く

ほころんだ菊花の気品あふれる美しさが表紙を飾った、今号の『あやなりBP』。その晴れやかな空気に、だれもがはっと惹きつけられる。2026年度の表紙を飾るのは、大久保智睦先生の作品。来年、学園創立100周年を迎えるにあたり、白寿(99歳を迎える方の長寿祝い)の心を込めて、この日本画を提供した。
「自分の作品で、この1ページを刻めることをとてもうれしく思っています。文教大学がこれからも教育界の中で発展できるように。そしてこの冊子をぜひ手にとっていただけるようにと願って描きました」
 大久保先生の専門は、日本画。現在所属している美術専修では日本画のみならず、デッサン、油絵、水彩、版画といった絵画全般を指導する。
「美術専修には、小学校全科、図工専科、中学校・高等学校の美術教員など、さまざまな進路を志望する学生が集まっています。それぞれ目指す進路は異なりますが、「表現する力」と「伝える力」の両方を身に付けながら学んでいることが特徴です。小学校や中学校時代に出会った先生の影響を受けて、自分も“こんな教員になりたい”といった志を持っているため、総じて文教生は真面目で優れた人間性の学生が多いと感じています」
 もちろん卒業後、クリエイター職や作家として活動する学生もいるが、長年の積み重ねから、教師として活躍している卒業生のネットワークは広く深い。そのため、たとえば教育実習では、卒業生が担当教諭となることも珍しくない。
「教師として活躍している卒業生が多く、教育実習先で卒業生が指導教員として実習生を担当してくださることもあります。また、新入生の出身校の先生が本学の卒業生だったりすることも珍しくありません。こうした卒業生と在学生とのつながりが、学びを次の世代へとつないでいく循環を生み出していることも、本学の大きな魅力だと感じています」

卒業生と在校生がともに紡ぐ歴史の1ページ

教え子たちは1年次からデッサンなどの基礎力を高め、表現者としての素地を磨いていく。絵画の実技指導でとくに重視している基本は「観察力を養うこと」。自分の目でしっかりと観察し、ものごとを正確にとらえて体現する力を養うことが、表現者としても、美術指導者としても欠かせない地盤になるという。
「たとえば、戦後の日本を代表する美術教育研究者の宮脇理さんは、『4本足のニワトリ―現代と子どもの表現―』という著書の中で、子どもたちの表現を手がかりに、私たちが対象をどのように認識しているのかについて論じています。これは、幼児から小学生くらいの子どもたちにニワトリを描いてもらうと、「動物=4本足」という固定観念から、本来2本足であるはずのニワトリを4本足で描いてしまう事例を取り上げたものです。宮脇氏は、このような子どもの表現を通して、「何を見たか」ではなく「どのように対象を認識しているか」を問いかけました。「4本足のニワトリ」は、観察に基づく表現と、イメージに基づく表現の違いを象徴する事例として知られています。実際に模擬授業やワークショップの導入として、参加者の方々にイメージだけでニワトリの絵を描いてもらうことがあるのですが、意外にも正確に描ける人はそれほど多くありません。私たちは、実際に見ているようでいて、思い込みや既成のイメージに頼って物事を捉えていることが往々にしてあります。今はAIで簡単にイラストを制作できる時代ですが、その前に、自分の目で見て捉える力を養うことが大切だと考えています。誤った認識や先入観にとらわれず、多面的に物事を理解しようとする姿勢こそが、美術やものづくりを支える土台になると思います」
4年間の集大成が、卒業制作。学生たちはほぼ1年かけて大作の創作に挑み、1月末頃に埼玉県立近代美術館で開催される卒業制作展で、美術専修の全教員が立ち会う最終講評会に臨む。
「卒業制作は“自分自身と向き合う探究の日々”です。時間との戦いもあるなかで、自分の力をどこまで出せるか―。我々教員は、その実現に向けてサポートします。また、作品はいわば“問いかけ”のようなもので、自分の考えを他者に問いかけ、鑑賞者がそれをどのようにとらえるか。良い作品は、見る人ひとりひとりの心の鏡となって経験や記憶、感情に働きかけて、それぞれ異なる解釈や想像を引き出します。そうした対話のような相互関係が生まれることで、作品づくりが完結すると私は考えています」
近年は卒業制作展と同時に、有志の卒業生らによる展示も開催している。在学生にとっては、すでに教師として活躍している卒業生と深く関わる貴重なチャンス。卒業生からアドバイスをもらえることもあり、社会への第一歩を着実に踏み出せる、と大久保先生は感じている。
「社会に飛び立つ直前は、誰もが期待と不安が入り混じった気持ちを抱えるものです。そんなときに、ひと足先に社会で活躍している先輩たちとのつながりを実感することで、安心感を得られます。これも歴史ある本学の大きな魅力といえるでしょう」

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    • おおくぼ ともむつ
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