あやなりBP

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2020年8月掲載
島崎 鳳濤 さん

島崎 鳳濤 さん

(立正学園溝の口小学校/1957年卒業)

同級生16人と門をくぐった新しい小学校

 書歴70年を過ぎた島崎鳳濤さんは、昭和26(1951)年に開設した立正学園玉川小学校(溝の口小学校)の入学生第一号である。幼稚園の同級生たちの多くが公立の高津小学校へ進む中、「生家の菩提寺の関係で、立正学園の学校だった溝の口小学校に入学することになったようです」と当時を振り返る。同級生は16人。制服があり、「舞踊」の時間など特色ある授業も当時から取り入れられ、公立校とは一線を画す学校だった。
 島崎さんが近くの書道教室に通うようになったのは、5歳の時。戦後の物資が乏しい時代で、白い紙は珍しかった。そうした状況下にあって、筆にたっぷりと墨を含ませ白い紙に字を書くのは快感だったと言う。小学4年生からは静雅書道会本部の門を叩き、本格的な勉強へと入る。資格も師範、師範上と進み、最高位である成家を取ったのは24歳の時である。

伝統的な書の世界にあって新しい表現を模索

 同じ字でも、表現の仕方によってまったく違う世界が現れる。では書家として何を表現したいのか。最終的に書が行き着く場所はそこにある。
 「お手本通りの美しい字を書くことを目指しても、自分しか書けない字を求めても、それは自由。自分は後者を選び、書とは理想や希望を表現する行為だと思っています」
 昔は難解な字こそ、崇高で尊い表現だと思っていた。しかしいつしか、「見た人が読めない字では……」と考えるようになった。誰にでも読むことができる字で、人を感動させるものを表現したい。最近では白と黒の世界に色墨を加え新しい表現を模索している。例えば外国での展覧会では教会などに使われるステンドグラスをイメージした色づかいで、東洋と西洋の融合、地球の平和という願いを書に込めた。
 「邪道、かもしれません。けれど新しいものを創造していくには、変えることにチャレンジしなければ」
 伝統的な書の世界にあって、既存のものをどう変えていくか。島崎さんの情熱的な取り組みは続いていく。