あやなりBP

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2018年7月掲載
加藤 明子 さん

加藤 明子 さん

(文教大学女子短期大学部文芸科/1983年卒業)

司会業から酒田の魅力発信に貢献

 山形県最大の河川・最上川。その河口に拓けたのが酒田市である。酒田港は古くから海運で栄え、江戸時代には北前船の往来で隆盛を極めた。その酒田に結婚を機に移り住み、まちを盛り上げる活動に奔走するのが加藤明子さんである。
 遡ること約30年前、女性も働くのが一般的な土地柄に嫁ぎ、仕事を探して訪れたハローワークの窓口。「話す仕事をしたい」と相談すると地元有線放送局のDJの仕事を紹介された。これがきっかけとなり、「結婚式の司会をしてほしい」と求められ司会者に。市内にホテルが建ち始め、自宅や地域の公共施設で行っていた結婚式をホテルの式場で行うケースが増えてきた時期だ。仕事は順調で、フリーで仕事をする司会者同士のネットワークをつくり、平成13年に法人化。やがて司会だけでなく、どんな披露宴にしたらよいか相談されるようになる。そして現在ではブライダルに限らず、イベント全般のプロデュースも行う。
 「東京から加山雄三さんや財津和夫さんを呼んでホテルでディナーショーなどをやったり、酒田の花柳界にあった花魁道中を復活したり、地域のイベントで司会をしてほしいと言われれば出かけていきます。実は自分から“こうしたい”というのはあまりないんです。求められることに応えていった結果、今があるという感じ。楽しいな、おもしろいなということをやってきただけなんですよ」
 人を楽しませる仕事。「まずは自分が楽しまなければね」と加藤さんは笑う。そして根底にあるのは酒田に対する「郷土愛」だ。

港町から歴史と世界を感じる

 東京生まれの東京育ち。文学が好きだった少女は、文教大学女子短期大学部文芸科へ進学。松隈義勇先生の「松尾芭蕉研究ゼミ」に所属するが、「ここに自分の原点がある」と加藤さんは言う。
 「短大でしたがゼミという形で勉強することができ、『芭蕉から見た源義経』というテーマで卒業論文も書きました。松隈先生のご指導でますます文学・言葉というものが好きになり、それが言葉で伝えるいまの仕事につながっています。酒田にもゼミの研修旅行で来ているんですよ。その思い出深い地に自分が住んでいることが、とっても不思議ですね。東京にずっと暮らしていたとしたら…。いまのような大きなスケールでは生きていなかったかもしれませんね」
 加藤さんにとって、港町としての酒田の存在が年々大きくなっている。北前船の日本遺産登録に貢献し、平成29年には「北前船寄港地・船主集落」が日本遺産に認定された。また大型クルーズ船の寄港地に酒田港が決まると、船客を迎える「おもてなしカフェ」を提案。地元の高校生と外国人が交流する場にもなっている。
 「港のことを考えることに、いますごくやりがいを感じています。港、海、その先には世界が広がっています。そのことを子どもたちに伝えたいですし、酒田で生まれ育ったことを誇りに思ってほしいですね」

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    • 加藤 明子 さん
    • かとう あきこ
    • 有限会社チアーズ代表取締役。NPO法人酒田港女みなと会議副理事長。NPO法人酒田みなとまちづくり市民会議理事。酒田港中長期構想検討委員。酒田商工会議所おもてなし部会副部会長。
      文教大学女子短期大学部文芸科 1983年卒業
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